境界線と地図の物語。
世界の地図。シトカ区の地図。地下の地図。シトカと先住民族とのあやふやな境界線。ユダヤ教の半ば秘術的な境界線。夫婦、親子、人と人との境界線。そして、故国の地図も境界線も持ったことがないユダヤ民族。
また、ジャンル的にも、その境界線をひらりと跨いでいる。
ランツマンを始め、拠り所を持たないユダヤ民族。確固たる拠り所を得るのが彼らの悲願だけど、陰謀によってそれを得ようとする時、今までの境界線は暴力的に変わることになる。さらに、それによって、物語と現実との境界線も破れ、両者の歴史は合流するかもしれない。そこで、ランツマンが最後に見つけた、自分たちの拠り所とは?
全く知らないユダヤ人の生活と、さりげなく語られるSF的背景によって、世界はひじょうに奥行きをもって描かれている。背景に映り混む程度にしか語られないけど、改変歴史ものとしても、けっこう凄いことになっていそう。ただ、あくまでメインは疲れた中年刑事ランツマンの奮闘。
元妻で、今のボスであるビーナのツンデレっぷり(笑)も読みどころ。