ヤクザと闇金とホストが蠢く不夜城新宿に挑む胡桃。キャバクラ界に流れ込む謎めいた大金は人を狂わせるには充分だった。当時闇で起こっていた出来事を、キャバ嬢の視点からドキュメントしていく部分はリアルだ。その辺を知ったような顔で適当に脚色されたドラマより、余程読み応えがある。そのようなドキュメントの部分はもっと評価されていいと思う。
胡桃と大野の恋愛は下巻を貫く重要なアクセント。正直この部分がないと読み進むのは辛い。この本は怠惰で頽廃した世界を色濃く表現しているから、胡桃のあり得ない恋はより儚く切ない恋愛ストーリーとなる。
この作品を読んで嫌悪感を抱くのはある意味正しい。胡桃を嫌いになり軽蔑することも健全といえるだろう。この小説はそのように描かれているのだから。だが、考えて欲しい。もしこの小説でうそ臭い任侠なり救いが闇の世界で存在することを表現して何になろう。読み手がスッキリするだけでしかない。
本来は封印されたまま、知っている人しか知り得ない物語に、読んでみようと考えている人の期待は裏切らない。もし、読後に『たいした事ない』と感じる人は世間に揉まれ心が擦れてしまったか、人間を知らないで生きてきた世間知らずなのかもしれない。