アンチェルは本物だ。調味料も、飾り付けも、一切使用しない。
巷には、派手に鳴らしている演奏がよくある。しかしアンチェルは、そんなことはしない。
結果、このヤナーチェクの作品を最もそれらしく描けたのが彼だ。彼は、両親と妻子をナチスに虐殺された。それがさらに深みを与えているのかもしれない。飾り立てて、美化して、ティンパニとトランペットの咆哮の津波で勝負しようとしている若手の指揮者さんには到底到達できない境地だ。
打ち鳴らすのが本当に格好良い演奏なのだろうか? 違うと思う。アンチェルはティンパニを抑えた。トランペットも紳士だ。それなのに、巷の、怒濤のような演奏よりも、ずっと格好良かった。
派手に鳴らすだけの、外見だけの演奏が、稚拙に思えてきた。本当の格好良さは、外見には決して存在しない。