アマゾンコムには、筆者も舌を巻くような映画マニアの方々が大勢レビューを書かれているので、この映画にはどんな評を・・・?と興味津々だったのですが、誰も書いていなくってビックリ。実は筆者も永らく未見だったのですが、TSUTAYA発掘良品シリーズで観る事ができました。あのラインナップは、どうもレンタルで版権を独占しているのか、販売されず、ソフトとして所有したいユーザーには嬉し痛しの企画ですが、やはりDVD発売してくれ!という声は『殺しの分け前 ポイントブランク』と共に叫ぶべきだと思い、レビューを書く次第であります。
ハリー・キルマー(ロバート・ミッチャム)は海運業を営む旧友タナー(ブライアン・キース)から、取引のこじれで、日本のヤクザに誘拐された娘を救出してほしい、と頼まれる。2人はかつて進駐軍として日本に滞在していた仲だった。そして、キルマーには、かつて日本滞在時に愛した女、英子(岸恵子)がいた。昔日の思いを胸に、日本に向かうキルマー。そして、英子の兄で、かつてヤクザの幹部だった田中健(高倉健)とも再会。彼の助けでタナーの娘を無事救出するが、組の面子から、今度は健が狙われることに・・・。ロバート・ミッチャムが義理人情の世界に挑む!
本作の脚本を書いたポール・シュレイダーは、大のやくざ映画オタクとして知られていますが、そもそもこの世界に手引きしたのは、兄のレナード・シュレイダー(本作で原案担当)であります。レナードが日本に英文学の講師として来日していた時に、ポールが兄のもとを訪れ、その時に見せられた東映やくざ映画にすっかり魅了されてしまい、アメリカ帰国後に東映専門の劇場に入り浸って50本近くのやくざ映画を観まくったといいます。ポール曰く「この映画の脚本を書いている時、東映の脚本家になった気分だった」とか。
そんな2人が共同で書いた物語は、見事に義理人情の世界を描いており、「フジヤマ・ゲイシャ」のノリで日本文化を描いた噴飯物が多いアメリカ映画の中にあって、ほとんど違和感なく見ることができる、というか観ているうちにこれが「洋画」だという事を忘れてしまうぐらい、見事な「やくざ映画」になっていると思います。
日本の精神文化を、やや美化しすぎでちょっとこそばゆくなる部分や、日本の歴史を研究しているアメリカ人学者(レナードがモデルか?)の自宅がやたらとだだっ広く、しかも銃器の宝庫(違法だろ!)という細かいツッコミどころはあるにしても・・・。
監督のシドニー・ポラックも、やくざ映画をちゃんと研究していて、クライマックスの立ち回りでは、お約束の真俯瞰ショットもあったりして「わかってるじゃん!」と手をたたいてしまったり。東映の協力もあり、多くのスタッフは日本人で固められていたことも、本作の作品的な成功の要因だったのでしょう。
しかし、本作は興行的にはアメリカでは大変な失敗だったそうです。きっと一つには、舞台が全編日本だという事と、「義理・人情」といった日本独特の考え方が、当時のアメリカ人にはまだ理解できなかったからなのではないでしょうか。作中でも、ミッチャムの相方が「義理」の意味が理解できず、健さんに「義理」と「借り」はどう違うのか?としきりに訪ねる場面があり、これがまさにアメリカ人との価値観のギャップだったのでしょう。(ということはシュレイダー兄弟は「変」って事?)こうした作品の価値を理解してもらうには、タランティーノのようなオタク世代の登場まで待たなければならなかった、のですね。
実は意外と単細胞な筆者、素直に楽しんでしまったのですが、この『ザ・ヤクザ』、日本の映画ファンからはどんな評価を受けているのか、気になります。「日本の文化をきちんと描いた、あっぱれなアメリカ映画」それとも「ちっとも洋画を観ている気にならない、新鮮味のない映画」?・・・他の方々のレビューを、楽しみにしております。
最後に、ミッチャムは東京の夜景も似合う!と書き添えておきます。