ふとした偶然からサマーセット・モームに興味を持ち、人間の絆、月と六ペンスの次に本作を読んだ。
ここまで続けられたのは、作品としての魅力に加えて、行方氏の現代的な翻訳によるところが大きいと思う。本当に読みやすい。
短篇集とはいえ、ボリュームも多く読みごたえがある。
上下巻を通じて、モーム作品に見られる人間の二面性や矛盾した心理を、観客席から見るかのように楽しめる。
ストーリーにもメリハリがある。それぞれの話の最後がドラマティックで、終盤はドキドキしながらページをめくっていた。
当時の階層社会や人種への偏見を意識せざるを得ないが、現代人が忘れがちな心の豊かさについて考えさせられる。
巻末のあとがきには、翻訳者の研究を踏まえた要約・評論があって、これもまた興味深い。
モーム短篇選〈下〉 (岩波文庫)と合わせて楽しみたい。