これほど一世を風靡したジャズ・アルバムがあっただろうか。昭和の真っ只中で突如ブームになったモダン・ジャズは黒人特有のソウルフルなスピリッツをふんだんに盛り込んだファンキーという爛熟期を迎えた。まさに元禄時代を思わせる大衆文化にモダン・ジャズが受け入れられたモメントでもあったのだ。何よりもボビー・ティモンズのMoanin'という名曲が大ヒットしたことがその一番の要因としてあげられるが、御大のアート・ブレーキーをはじめ、リー・モーガン、ベニー・ゴルソン、ティモンス、ジミー・メリットといったパーソネルの充実を見落としてはならない。特に新進トランペッター、リー・モーガンは当時怖いもの知らずの二十歳の若者で、スリリングなフレーズとブリリアントな音色でグループを華麗に際立たせた。演奏者としては過小評価気味のゴルソンだが、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンズを思わせる密度の高いアドリブを展開している。また、ゴルソンの作編曲の才能は、Are You Real?などの名曲を生み出すとともに、グループに特有のサウンドをもたらすアレンジの手腕を発揮している。そのことは、このグループがバランスの取れた高い音楽性に支えられていたことを示すわけだが、同様にブレーキーのドラミングも単なる野性味だけでなく繊細で計算しつくされたセンシティブなものであったことを見逃してはならない。ジャズメッセンジャーズはこの録音の後、パリで大成功し、その余勢をかって日本で爆発的なヒット、さらに初来日をも果たし、本格的なファンキーブームの到来となった。50年代モダン・ジャズの一つの頂点を形成した至宝的名盤である。