上下2巻の岩波文庫版「モーツァルトの手紙」。
下巻冒頭から展開するのは、モーツアルトとコンスタンツェとの結婚。
103ページには、よく引用される4曲連続して書いたピアノ協奏曲についての短いけれど的確な作曲者自身のコメント。
その後「フィガロの結婚」で音楽会のスタートなる華やかな成功の瞬間。
でもそれは長くは続かず、妻の病気療養費のために、知人にお金を借りることを懇願する手紙が連続する。
ぎりぎりに逼迫した独立音楽家生活を続けながらも、妻へは一途な愛情を貫く手紙を送る。
そうしながらも彼の逝去の年、1691年が近づいてくる。創作の方は、やむことなく、名作がどんどん生まれている。
でも1690年頃から、これまでどんなときも曇ることがなかった彼の手紙の中に、影が落ちてくる。
「一文なし」「何もかも冷たい、氷のように冷たい」「今は空っぽなんだ」。
ロマン・ロランは「モーツァルトの手紙」を読んだ後に、「これはすべての読書人にとって必読」と、
感激を込めて書きつづったと、巻末の訳者あとがきにある。