このCDは、レヴァイン指揮ウィーン・フィルのモーツァルト交響曲全集から、モーツァルトの交響曲の中でただ二つの、短調で書かれた傑作交響曲を組み合わせた好カップリング盤だ。モーツァルトの交響曲といえば、第35番ハフナー以降に傑作が集中しているのだが、どういうわけか、第20番台で、一際、燦然と輝いているのが、このCDに入っている第25番なのだ。わずか17歳にして、これほどの傑作を書き上げてしまうモーツァルトの早熟な天才振りには、ただただ、敬服するしかない。
レヴァインは、モーツァルト没後200年にあたっての、ウィーン・フィル初のモーツァルト交響曲全集の指揮者として、楽団側からの推薦で選ばれた指揮者であり、この全集の録音時は、あのベルリン・フィルの、カラヤンを継ぐ音楽監督の有力候補と目されていた時期とも重なっており、まさに、この頃は、レヴァイン日の出の勢いの時期であった。
レヴァインの演奏は、特に第25番が素晴らしい。モダン楽器による名盤として有名な、ブリテン指揮イギリス室内管弦楽団やケルテス指揮ウィーン・フィルの演奏と比較して聴いてみると、その音楽作りは対照的であり、中庸なテンポで、暖かく穏やかな演奏をする彼らに対し、レヴァインは、アグレッシブで、特に、第1楽章と第4楽章は、まさに、青年モーツァルトの疾風怒濤、駆け抜ける短調といった感があり、圧巻だ。第25番は、曲と、レヴァインの最良の個性がピッタリとはまった名演奏といっていいだろう。
第40番は、モーツァルトの交響曲の最高傑作であり、第25番とは対照的な、晩年のモーツァルトの憂愁に満ちた美しい交響曲だ。こちらの方は、名盤の誉れ高い、ブリテンの劇的で陰影の濃い演奏や、ワルター指揮コロンビア交響楽団のゆったりとしたテンポで情感豊かにたっぷりと歌わせる演奏と聴き比べると、美しくはあるが、やや、彫りの浅い演奏といえるかもしれない。