当初は、やや軽い速めのテンポと、アバドのすっきりと明るく中庸な特色のない解釈や、BPOの”普通にうまいオケ”的音色に不満があった。パユのフルートも、ちょっと大人しいというか、ややオケに同化し過ぎ、迫力に欠ける(録音のせいも多分にある)様に思われた。
しかし、この新しい再発盤で聴くうちに、とてもバランスの良い演奏で、飽きのこない、何度も聴きたくなる演奏であることがわかって来た。ゴールウェイやランパルのような押しの強さがないのが、逆にこれらの聞き慣れた曲には最適なのかもしれない、と思うようになったのである。
カデンツァもここでしか聴かれないものであるが、大変魅力的。ベルリンフィルと互角に渡り合う、滑らかなフルートはさすがである。軽いテンポも、気持ちが良いと感じるようになった。といっても、全体にテンポは抑えめであり、むしろ、他の名盤に比べ、緩徐楽章(第二楽章)が速いだけなのである。
モーツァルトのコンチェルト演奏解釈の難しさを感じてしまうのだが、よく聴けば、新しいニュアンスも聴かれ、面白い。ベルリンフィルも、低音が強調され過ぎない室内オケ的編成で演奏をしているが、さすがにきれいにミスなくつけており、これはこれで、他にはまねできないもので、貴重な演奏である。
1996年、パユの26歳での演奏(EMIデビュー盤だったはず)であり、13年経った現在なら、もっと違った、スケールの大きなのびのびとした演奏を聴かせてくれそうであるので、再録音の日が楽しみである。
なお、今回の再発売の方が、いつものように、初出よりも高音がわずかに強調され、よりヴィヴィッドで好ましいように感じられた。
”同じくベルルンフィルの首席になった途端、一躍注目株になったエマニュエル・パユのモーツァルト。抜群の青年が忽然と現れた感じで、これはモーツァルトをきくにもふさわしい。”(吉田秀和、音楽展望、1997年12月16日)