評価はことごとく悪いようであるが、私は素晴らしい演奏であると思う。特に23番の演奏は素晴らしい。この曲は、モーツァルト後期ピアノ協奏曲の中で、その親しみやすい旋律、わかりやすい形式から一般的にも良く知られる曲であるが、この後の24番、25番の協奏曲と共に古典的完成を成す古典派最高峰のピアノ協奏曲である。ここで、ポリーニはこの当時の持ち前の強靭さや華麗さは影をひそめ、べームにぴったりと寄り添ってこの曲に相応しい格調高い演奏を行っている。特にそれは第一、第二楽章に顕著で、第一楽章はウィーンフィルの温かみのあるバックに見事に調和して落ち着いた演奏をしている。第二楽章もことさら情緒的になることなく透明感のある高貴な演奏をしている。また、第三楽章は快活なロンドであるため、ポリーニは持ち前の鋭さを幾分発揮し生き生きとしているが、格調の高さは保たれている。バックハウス亡き後、べームはポリーニとの共演を好んだ。この演奏はこの二人の幸運な出会いの所産ではないだろうか。