イ長調ピアノコンチェルト(K.488)は、モーツァルトの内面性をたたえたものとして屈指の曲である。私は、この曲でモーツァルトに開眼した。第2楽章のシチリアーノは、静寂と拮抗するかのごとく深い哀感をともない、まるで雨だれの変化するごとくである。幾枚かのCD、LPで聴いてきたが、このグルダ&アーノンクールの1枚は、オーケストラが背景からせりあがり、SACDということとも相俟って、まるでシンフォニーを聴くがごとくである。一聴にあたいする1枚。解説の諸石幸生さんもここのところを、「協奏曲ながら壮麗なオーケストラサウンドを前にしている興奮に我をわすれてしまう」と述べている。生き生きと血のかよったモーツァルトである。