1971年製作の作品なので、映像や音声にやや古さがないといえば嘘になります。しかし、そのカラー映像はじゅうぶんに鮮明で美しいものですし、音声もモノラル録音にしてはかなり満足のいくものになっています。何といっても、ドイテコム/マティス/ゲッダら、往年の名歌手たちの全盛期の姿が堪能できるのが魅力。なにしろ、チョイ役である弁者や甲冑の男を、それぞれディースカウやモルが演じているというのは、あの有名なショルティ -- ウィーンフィルのCDにも匹敵する豪華さです。特に、ディースカウの演じる弁者の演技と歌唱の見事さは、特筆に価します。添付の解説書でも指摘されていますが、このディスクのような映画仕立ての盤の良い点は、本編の映像中では歌手たちが普段どおりの音量で声を張り上げて歌っているわけではないので、歌手たちの表情がとても自然で美しいということです。また、いくらか文語的で韻文調な趣のある日本語字幕も、大変好感が持てます。実は私がこの盤の演奏で一番気に入っている部分は、パパゲーノの鈴の音が、主旋律だけでなく中低音が非常に良く響いており、いつも聞きなれたメロディーとは一味違って聴こえる、という点です。とにかく、『魔笛』にまた素敵なDVDが一種類増えました。