アーノンクール指揮、チューリッヒ歌劇場のフィガロ(ヨルゲン・フリム演出)はBS2で2003年1月4日に放映された(2002年の公演か?)が、DVD盤は1996年2月の舞台の収録。キャストはバルバリーナ以外は同じ。
既にアーノンクールとフリムで『コシ・ファン・トゥッテ』『ドン・ジョヴァンニ』が公演・収録されている。比較的単純化された装置と衣裳で、強弱や緩急を強調した劇的な舞台で、キイ・ワードは「シリアス(真剣)」。
例えばケルビーノ(ニキテアヌ)の《自分で自分がわからない》は、大変早いテンポでほとんど性急に話すように歌われ、緊迫感を高めていた。
伯爵夫人のアリア《楽しい思い出はどこへ》は第2幕の裁判の六重唱の前に置かれている(ポネル演出やグラインドボーン音楽祭の演出と同じ)。伯爵のギルフリーの演技のスザンナに対する想いは真剣そのものであり、浮気などというものではない。
マグヌスのマルチェリーナは若いのでびっくり。第4幕は第3幕から切れ目なく続き、場所も同じ、宴会場が催された庭園である。宴の後でパラソルがひっくり返ったままだったりする。
第4幕のマルチェリーナとバジリオのアリアはも添え物ではなく、真剣に演出されている。マルチェリーナのアリアは後半でスザンナと伯爵夫人も踊りに加わって、最後の騙しの芝居が女たちが男たちに仕掛けた芝居であることが強調された。また、バジリオの経験と智恵のアリアがこれほどきっちり主張されると感動的でさえある。
ライナーノーツで城所孝吉氏は「夫人役をコロラトゥーラ・ソプラノに歌わせている。!フィガロ再演で夫人役は『後宮』でコンスタンツェを歌ったカヴリエリだったから。メイとレイのふたりの声色は驚くほど似通っており、手紙の2重唱を聴くと、どちらがどのパートを歌っているのか分らなくなるほどである。その結果、伯爵が変装に騙されてしまうのも、まったく当然と感じられる」と指摘。