若い頃、世界文学全集で繰り返し読んだモンテクリスト伯が脳裏に残っていて、70代後半になった今でも懐かしく思い出します。最初、講談社文庫の新庄嘉章訳を買ってみたのですが、覚えている訳文と違い迫力がありません。今回、岩波文庫の山内義雄訳を購入して、真っ先にチェックしたのは最後の個所でした。講談社版では「待て、そして希望を持て!」となっていて私の記憶と違います。岩波文庫版で「待て、しかして希望せよ!」の訳を見て初めて60年前にタイムトラベルした気分になりました。数年前に見た文学座の劇では内野聖陽の台詞で、やはりこの「希望せよ!」が採用されています。その力強さは今でも衝撃的で、不朽の名訳と思います。その他、メルセデスがダンテスに再会する時の台詞や、エデの裁判の状況をアルベールに語るボーシャンの台詞。これらの感動的な描写(訳文)はその一語一句が青春時代の感動と共に60年経った今でも私の頭にこびりついています。