野蛮なモンゴル人による支配というイメージから、低く見られがちであった大元時代の文化を
根本から問い直す画期的労作。杉山正明氏らによる、歴史分野における近年の大元時代に対す
る認識の激変を承け、この時代の文化水準の高さを、豊富な資料によって描き出す。タイトル
は「出版文化」だが、その内容は従来の出版文化研究とは異なり、ひとつひとつの書物をあり
とあらゆる角度から調査、分析し、その過程において、様々な新知見を提出する。それらはも
はや「出版」という枠に収まるものではなく、多くの分野に対して刺激を与えるだろう。その掘
り下げの深さには目を見張るものがある。
文・史・哲などの分野にかかわらず、大元時代を研究する、あるいは知る上では必読の書。
また著者も敢えて冒頭にて断っているが、その論考に附された膨大な注も、様々な知見やヒン
トを読者にもたらすことは間違いない。その情報量の多さには、ただただ圧倒されるしかな
い。読むためには中国学や大元時代についての多少の専門知識を必要とするが、しかし、たと
えそういった知識を持たずとも、ぐいぐい引き込まれる力強さが本書にはある。
大元時代の文化水準の高さを主張することに急なあまり、その他の時代、特に明代に対する批
判的な言が若干目立つけれども、しかし、この書の出現によってこの時代の文化の研究は、
大いに進展するだろう。