苛烈な内乱を克服して頂点を極めたクビライは、対南宋戦争により、ついに中華文明をも自己の手に握るのでした。カイドゥの乱をはじめとする中央アジアの混乱や東方三王家の反乱により帝国の政治的統合は動揺をきたしますが、クビライの政治力とモンゴルの同族意識により、イェケ・モンゴル・ウルスは緩やかな統合体としてユーラシア大陸の東西を一体化させ、大陸と海洋を結びつけたヒト・モノ・カネの回流運動が実現します。
かくしてユーラシアの政治的・経済的な統合を達成したモンゴル帝国ですが、クビライの後継者たちによる政治的対立と自然環境の変化に伴う生産力の低下により、帝国の一体性にも翳りがさし始めます。そうした中、諸ウルスは各地域における政治的・社会的な流れの中で自己を変容させ、解体していきます。そしてモンゴルの遺産の中から、諸民族は新たな政治的統合の土台を見出すことになるのでした。
下巻では、クビライの南宋征服から筆を起し、大元の混乱と北帰、そして各ウルスの解体に至るまでの流れを扱っています。クビライが創出したという大陸と海を結ぶ物流ネットワークと統合のシステムに重きを置き、彼の経綸によって世界の一体化が始まったと主張しています。
モンゴルの世界史的な意味合いについて、些か熱を入れ過ぎている気がしなくもありませんが、帝国的統合のさまざまな側面に光を当てるという意味で、やはり読むに値する本だと思います。