著者は、様々な原点資料から、
ユーラシア大陸に起こったモンゴル帝国の重要性を説き明かす。
それは世界史理解の上で、とても貴重な、示唆に富んだものです。
ただ、この「本」に限っていうと、
雑多な文章を寄せ集めて流れを付けて並べているため、何度も同じ結論が登場する。
初出の文章がそのまま掲載されているから、ほぼ同じ表現を何度も読むことになる。
経済を社名に掲げる企業のビジネス文庫なら、この程度でもいいのでしょうか。
そう思っているとしたら、編集者も著者も、考えが甘いし、間違っています。
著者は、これまでの「イメージと先入観で語られてきて定着してしまった世界史」を批判しますが、
この本が、それと同じことになってしまっている。
たとえば、本の説明文にも書かれている、
「モンゴルは戦わない(平和的協調の)軍隊だった」ということ。
実際には、モンゴル軍は限られた兵力で多大な敵と戦い、
広大な領地を占拠していかなくてはならないので、自軍の減少を最小限に留めたかった。
できることなら戦わないで勝ちたい。そのために、戦う時は徹底的に殲滅し、虐殺し、
相手が事前に戦意を喪失するほどの猛攻を加えた。それが「結果的に戦わない軍隊」となったのです。
*この辺は『モンゴル帝国の戦い』(ロバート・マーシャル)が詳しい。
著者の論旨では、不十分すぎるでしょう。
せっかく世界史理解において重要な補助線を引いてくれそうな書物であり、著者なのに、残念です。