携帯電話の普及によって開けたモバイル・マーケティングの領域を考察する人のための入門書です。モバイルすなわち携帯電話という前提で論が展開されています。
全8章の前半4章が理論編、後半4章が実践編という構成です。
3章まではモバイル・マーケティング序論というべき内容で、携帯電話の普及によって何が新しくなったのか、PCを起点としたインターネット・マーケティングとは何が繋がっており何が変わったのか、などを整理しています。
4章は個人的に一番面白かったところでしたが、独立した新しい分野としてのモバイル・マーケティングが持つ可能性を考察しています。
実践編で取り上げられた企業のキャンペーンの中にはリアルタイムで目にした覚えのあるものも幾つかありました。背後でどんな工夫や発見があったかが紹介されていて興味深いものでした。
本書について好感の持てる点、役立った点は
●単に「モバイル的」な事象の表層を羅列するのでなく、背後にある新しい知見を解説していること。
●難解な表現を用いないにもかかわらず、曖昧なイメージに頼らない用語で書かれていること。
●その結果、読み手自身が「モバイル・マーケティングという視点で物事を見る」ための立ち位置を学べること。
残念だった点は
●携帯電話の個々の機能に具体的にどう結びついているのかについてあまり言及されていないこと。
●上記に関連して、「常に最新機種最新機能を使いこなしているのではない」ユーザ層の存在が捉えられていないこと。
全体的に「節度ある学問的な足場を守りつつ具体的な事象に取り組んでいる」という印象です。
今後更にモバイル・マーケティングなる新しい領域の展開を観察し考察するための出発点となる共通認識を得るのに役立つ本だと思います。