新チャンピオンになるソニーリストン戦と防衛戦の再戦までを中心にアリの動向・言動が丁寧に描かれている。
カシアス・クレイからモハメド・アリになるまでのアリの環境・心の変化と同時に、当時のアメリカの黒人差別の状況、ボクシング業界の世間的評価、アリに関わるボクサーの当時の立ち位置や社会評価など非常に興味深い内容が書かれた、単なるアリの栄光物語で終わらないアメリカの歴史のとある瞬間をとらえた良書と思う。
アリの事のみではなく周りの人間・社会状況の描写も多いが、それらが全てアリ対リストン戦の意味合いや、モハメドアリというボクサーがなぜこれほどのヒーローになりえたのかの理由に自然とつながっていき、全く退屈する事なくアリという存在の意義を認識し、アリ対リストン戦の描写部分に思いが深まっていく。
また著者の力量か訳者の力量かは解らないが、文体も訳本によくありがちな嫌味な言い回しや意味不明なジョークの挿入もなく読みやすい。
伝記ものとして大変素晴らしくモハメド・アリに興味がある方にはお薦めの本。