1970年から80年代にかけて流行ったポスト・モダン。それが、共産主義の崩壊で歴史的に実現した90年代。それ以降現代までの人間をとりまく状況を、いま世相で取沙汰されているアクチュアルな問題を手がかりに、明らかにしていった現代思想論です。
取り上げられているトピックは、ブランド品購入欲求 援助交際 フリーター 受精卵加工技術 人間胚への遺伝子操作 臓器移植 世襲制エリート家族 能力主義 文化相対主義 感情帝国主義 ネオコンとネオリベラリズム IT管理社会 見世物化したメデイア 等々。どれも最近のマスコミで騒がれているホットな事柄です。しかし本書は、それらの社会現象を皮相的に記述するのに留まっていません。世論やいわゆる識者が、「これは問題だ」と決めつけた時に彼等が判断根拠とした通念を、伝統的な哲学説にまで遡り、その妥当性を批判的に考察しています。典拠文献の引用パラフレーズが的確で説得力があります。
著者の考えでは、あらゆる分野で「モノ化」「使い捨て」などが不可避的に進行しています。人間の尊厳に反すると思いがちなこのような状況を隠さないこと。むしろこの流れを作っている「ヒト」の欲望を加速化させて矛盾を明らかにし、それを乗り越えたところに新しい時代が開けると、著者は積極的に考えているようです。単なる現実追随主義ではなく、著者の底には人間と時代の流れへの大きな楽観的観点があるように思われます。