この「モノノ怪」は話毎に見せ方が異なっていますが、今回はユーモラスだった「鵺」とは正反対で、終始シリアス調でした。また絵も「海坊主」と対極的で、柱や桟などの影となる面を黒ベタにする超硬調さで線と形を強調し、色は原色を避けアンティーク的ながらクリアな色調で、独特の質感に仕上げていました。
時代は地下鉄ほか小道具類からの考証的には、昭和一桁後半辺りが合致します。
このシリーズが異形のものにかこつけて視聴者に見せ続けたのは、人の醜さ、怖さ、そして弱さです。その部分の見せ方も、話によって違えてましたが、この「化猫」では、先頭車両に集められた、「一見どこにでもいそうな普通の人たち」から、少しずつその心の中にあったものが暴かれていくという作りで、私は最も身近でリアルな印象を受けました。視聴者は、或いは登場人物の誰かに自分を重ねられるかもしれません。
そして、化猫を成した被害女性の中にさえ、そういった部分が描かれました。ここが被害女性がどこまでも美しく哀れに描かれた「怪〜ayakashi〜」の「化猫」と異なり、一層生々しい話になっていたと思えます。旧化猫のように、見る人誰もが被害女性に同情し、感情移入するようなお話の方が、恐らくより多くの支持を得られたろうとも思うのですが、同じタイトルを冠したこの作品で敢えてそうしなかった制作スタッフの方針にも、瞠目したいところです。
「モノノ怪」全五話中、唯一とも言える、由緒正しい(?)怨みの怪談譚でもあり、また人間というものを見せ付け世に問う作品として、星5つです。
追記。
化猫というのは、猫が長い歳月を生き抜くことでなる場合と、有名な鍋島の化け猫騒動のように怨みを持つ人の血を嘗めることでなる場合があると言われており、旧化猫は前者、こちら新化猫は後者として、ここも描き分けられたようです。
即ち、旧化猫は猫自身の怨念、新化猫は血を介して猫に取り憑いた被害女性の怨念なのですね。