大した本ではない、と云ってしまえばそれまでだが、ひと一人の人生の記はいつも何かを教えてくれる。本書もまたその例外ではない。会社(日本専売公社)への入社に始まり、結婚、出向、転職そしてそのコレクター人生、母との別れ・・・ 人間 森永卓郎氏の形成過程がよく理解できました。面白かったですよ。
「いま私の収入は普通のサラリーマンよりずっと多いのだが、生活自体は貧乏だったときとほとんど変わっていない。収入が増えた分は、皆コレクションとその置き場の費用に変わってしまうからだ」(133頁)。
「ウィーンの本当の姿は、京都を一〇〇倍くらい閉鎖的にした、よそ者を一切受け入れない街だ。仲間はずっとそこに住んでいる人たちだけで、黄色人種を仲間だと思うというようなことはありえないのだ」(136頁)。
「日曜日に親類の法事に出かけてから体調を崩し、亡くなるまでの二日間、母は何も口にしていなかった。/持病の糖尿病の薬は血糖値を下げるためのものだが、それを服用しながら何も食べないでいると、急激に血糖値が下がって心停止に至ることがある、と医者は教えてくれた。/その話を聞いて、私は母の「覚悟」に気づいた。/生前、母は「介護で家族に迷惑をかけたくない」と何度も語っていた」(205〜6頁)。
人生は一度っきり。何があっても、可能な限り愉快な人生を送って悔いなく旅立ちたい、改めてそんな思いになりました。