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最後に私も筆者のように、モスクワで目撃した光景をご紹介したくなった。そのときは21世紀をモスクワで迎えて2,3日後の夕刻、国鉄駅クルースカヤの入り口付近でのことだった。よく見かけることだが一人の泥酔者が雪や泥まみれになって四つん這いに歩いていた。周りでは何をするでもなくビール片手にたむろしている若者やホームレス。誰も助ける様子もなく馬鹿にしたように眺めている。そこへ子供が突然その泥酔者めがけて顔面にとび蹴り。もちろん殴られた方は苦痛に顔を歪めているが、それでも誰も気に留めない。私があっけにとられて見ていると、2度目のとび蹴り。今度は回し蹴り。単に子供の遊びにされているのだ。善も悪もない、生存競争の只中にいるような感覚を稲妻のように打たれた瞬間でした・・・
おそらくロシア滞在の経験がなければ、筆者が書いている内容がにわかに信じがたいことばかりのように思えるかもしれないが、記載されていたこと一つ一つが生々しく思い出せる程に、現在のロシア(モスクワ)を映し出している。
筆者は触れてはいなかったが、ソ連崩壊前後に学生生活を終えていたか否かで、ロシア人への印象や彼らの世界観はかなり異なる。筆者のロシア観は一人の意見としてみるべきだが、共感するところも多い。
それよりも、よくもまぁ、あの地下鉄で撮影する勇気があったものだと感心する。地方へ向かうターミナル駅に!は自動小銃(!)を持った警察官が立ち、プラットフォームをパトカーが縦横無尽に走る駅で、だ!
しかし、今のロシアには、超大国と争った偉大さはもはや見られない。冬の道路を老婆たちが仕事で雪をかき分け、赤の広場のすぐ隣にはデパートが建ち並び、マクドナルドのハンバーガーは半分の大きさしかなく、ホテルに泊まれば売春婦の押し売りが延々と続く。決して安くはない宿泊代を払っても、蛇口からは赤錆の水が出る。本屋が先進国に比べて少なく、危険と紙一重の役人や警官の汚職…。
不満を挙げればキリがないが、また再び母なる大地ロシアに行きたいという思いがあるのも事実。
この本は、そういう思いを全て呼び起こすだけのエネルギーがある本。旅行に行く前に、一読しても損はしない。
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