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モオツァルト・無常という事 (新潮文庫)
 
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モオツァルト・無常という事 (新潮文庫) [文庫]

小林 秀雄
5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (17件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

メタローグ

小林秀雄(1902―83)の半世紀を越える批評活動の中で、戦時中に執筆された本書所収の一連の短いエッセーは、とりわけ忘れ難い。初期の「ランボオ」の衒学的な文章や「様々なる意匠」の頃のポレミックな批評とはまた異なり、日本の古典を素材にした文章は静かな緊張感に包まれている。とりわけ西行や実朝といった歴史上の登場人物の輪郭を、あたかも今そこに生きているように描き出す手腕は並ぶものがない。それは同時代に書かれた保田與重郎の古典論とは似て非なるものだ。「モオツァルト」は戦時中に構想、戦後発表された天才論で、戦争の危機の中で宿命の音を聴く著者の姿勢は一貫している。(宮川匡司)
『ことし読む本いち押しガイド2000』 Copyright© メタローグ. All rights reserved.

内容(「BOOK」データベースより)

小林批評美学の集大成であり、批評という形式にひそむあらゆる可能性を提示する「モオツァルト」、自らの宿命のかなしい主調音を奏でて近代日本の散文中最高の達成をなした戦時中の連作「無常という事」など6編、骨董という常にそれを玩弄するものを全人的に験さずにはおかない狂気と平常心の入りまじった世界の機微にふれた「真贋」など8編、ほか「蘇我馬子の墓」を収録する。

登録情報

  • 文庫: 317ページ
  • 出版社: 新潮社; 改版 (1961/05)
  • ISBN-10: 4101007047
  • ISBN-13: 978-4101007045
  • 発売日: 1961/05
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 1 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (17件のカスタマーレビュー)
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33 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
そもそもこの本は昭和36年5月に初版が刊行され、平成3年11月に56刷改版。それが平成18年4月に74刷まで増刷して8月に75刷が改版となりました。では、今回の改版で何が変わったか? 3つあります。まずは版組が平成3年版よりゆったりしました。昭和36年版は1ページ18行(1行43字)、平成3年版は1ページ17行(1行41字)が、平成18年版では1ページ16行(1行38字)になっています。次に富岡鉄斎論が昭和23年の「時事新報」に発表された現行題「鉄斎1」だけだったのに加えて、昭和24年の「文学界」の発表の「鉄斎2」と昭和30年角川書店「現代日本美術全集第1巻」所収の「鉄斎3」計2編が増補されています。そして、「小林秀雄全作品」の脚注に基づいた注解が60数ページにわたってついています。上の画像は平成18年版(「小林秀雄」の文字がセンタリングされています。平成3年版は左寄せ)のものです。注解はおおむね辞書的なものですが中には梅沢万三郎の当麻を「著者が観た公演は昭和17年2月頃に行われたものと思われる」と踏み込んだ注解もあり星5つつけましたが、雪舟(や顔輝)の「慧可断臂図」や光悦宗達の図版もあるとより一層いいですね。
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形式:文庫
「又、或る日、或る考えが突然浮び、偶々傍にいた川端康成さんにこんな風に喋ったのを思い出す。

 彼笑って答えなかったが。

 『生きている人間などというものは、どうも仕方のない代物だな。
  何を考えているのやら、何を言い出すのやら、仕出来すのやら、自分の事にせよ他人事にせよ、解った例しがあったのか。
  鑑賞にも観察にも堪えない。
  其処に行くと死んでしまった人間というものは大したものだ。
  何故、ああはっきりとしっかりとして来るんだろう。
  まさに人間の形をしているよ。
  してみると、生きている人間とは、人間になりつつある一種の動物かな』」 

川端、小林両氏の共同作業としては、学生の創作コンテストの選者のしごとがありました。戦後のことです。そして、入選作なし、評者評の傑作が残りました。
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形式:文庫
『無常という事』の最後にある、現代人が見失った「常なるもの」とは何なのか。これを理解するために何度も読み返しています。本文の記述によれば、常なるもの=変わらないものは、過去あるいは歴史です。これに対して無常とは人間の置かれる一種の動物的状態であると表現されています。

「思い出が、僕らを一種の動物である事から救うのだ。記憶するだけではいけないのだろう。思い出さなくてはいけないのだろう。」

「上手に思い出す事は非常に難しい。だが、それが、過去から未来に向かって飴の様に延びた時間という蒼ざめた思想(僕にはそれは現代に於ける最大の妄想と思われるが)から逃れる唯一の本当に有効なやり方の様に思える。」

この上手に思い出す例として、冒頭に書かれた「一言芳談抄」のなま女房の文章を比叡山で思い出した時の感覚が語られています。

「僕は、ただある充ち足りた時間があった事を思い出しているだけだ。自分が生きている証拠だけが充満し、その一つ一つがはっきりとわかっている様な時間が。」

こう読んでくると、「常なるもの」は何かと問うのではなく、「常なるものを見失った」とはどういう状態かと問う方が答えを見つけやすい気がしてきます。歴史や自分の生きてきた過去を見失って、刹那的に今を生きている現代人の状態を言っているのでしょう。これで正しいのかどうか自信はない。難問です。
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