平賀マリカのボサノヴァもカーペンターズのカヴァーも聞きましたが、本領発揮とも言えるジャズ・アルバムが一番生き生きとした歌声のように感じます。聞き慣れたスタンダード・ナンバーですが、ニューヨークのメンバーで固めたバックにのせた彼女のコケティッシュで魅力的な声は軽やかで伸びやかでした。新しい感覚ですから、とてもオシャレな音楽として伝わってきます。
「ニューヨークのため息」と形容されたヘレン・メリルの「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」も未来に夢が一杯感じられた時代のアメリカの良さを体感できるような温かい声で彩っています。有名な曲を取り上げるのには勇気がいるでしょうが、実力派の平賀マリカらしく堂々とした歌いっぷりです。
情感たっぷりに歌われる「マイ・ロマンス」のようなバラードもよい雰囲気を醸し出しています。英語の発音が良いですし、音程が安定していますので、聴く方も音楽に没頭できるでしょう。懐かしい雰囲気が漂い、人を愛する気持ちが届きます。
ラストの「エヴリシング」もしっとりとした雰囲気を漂わせながら上手く歌い回しています。MISIAのオリジナルの歌唱が耳についている曲ですから、中途半端な取り上げ方はかえって歌わなかった方が良かったのに、ということになりかねません。平賀マリカはアプローチを全く変えています。歌い上げるのではなく、情感を込めて歌詞の一言一言を大切にして大人の歌唱を披露しています。このようなしっとりとした取り上げ方は好きですね。最後までこのスタイルを変えない歌唱には意表を突かれましたが、歌が上手いからこそ、この取り組みは生きてきます。カヴァーの成功例の一つでしょう。