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何とみずみずしく、本物の風格にあふれた演奏だろう。何と激しく、聴き手の心にぐいぐいと食い込んでくる音色だろう。
ついに真打ち登場という感じで満を持してレコーディングされたメンデルスゾーン(2003年1月録音)は、みどりにとって、1990年アシュケナージ指揮ベルリン放送交響楽団と共演して以来、約13年ぶりの演奏。もう一方の人気曲ブルッフの第1番(2002年6月録音)も、みどり得意の曲目ながら、熟成を待ったあげく世に問う自信作である。
メンデルスゾーンでは、第1楽章のひんやりしっとりと歌う、あの冒頭の有名な旋律から、もう鳥肌もの。第2楽章の痛切な思いを込めた歌など、誰しも涙を誘わずにはおかない真実味がある。第3楽章導入部の羽毛のような軽やかさも、天下一品。特に、幸福感にあふれた終結部でのドキリとさせられるほど激しいリズムは雄弁で、何度繰り返し聴いても、こたえられないほどの感銘を与えてくれる。ブルッフでも、劇的な第1楽章、第2楽章でのいっそう清々しくつややかな歌、第3楽章の跳躍的なリズムの鮮やかさ、どこをとっても完璧。
共演のヤンソンス指揮ベルリン・フィルも、みどりの触発を受けたのか、いつにもまして演奏が熱い。ベルリン・フィルならではの軋むような厚みのある響きは、随所で強烈な効果を生み出している。両者の相性は抜群で、その格調高く質実な音楽には、不必要な誇張がまったくない。
ともすれば手垢にまみれたこの2大名曲は、この演奏によって、見違えるほど清新で輝かしいものになった。初心者はもちろんのこと、熟練の聴き手にも、初めてこの2曲に出会ったときと同じくらいの、鮮烈な感激を与えてくれるに違いない。(林田直樹)
内容(「CDジャーナル」データベースより)
五嶋みどりが、最も信頼するマリス・ヤンソンスとベルリン・フィルのサポートを受けて、メンデルスゾーンとブルッフのヴァイオリン協奏曲を録音。ロマンティックなミドリ・ワールドを堪能できる。
内容 (「CDジャーナル・レビュー」より)
ベルリン・フィルの定期演奏会のライヴ録音。すでに、大家の風格がにじみ出ている。メンデルスゾーンは、「録音することはないと思っていた」そうで、今回の演奏も10年ぶりとか。甘美なロマンあふれる流麗な作品だが、得てして美しいだけの演奏になったりもする。五嶋は緊張と弛緩、情熱と冷静のバランスが素晴らしく、それによって高い緊張感を生み出している。ブルッフの作品は、メンデルスゾーンのト短調の協奏曲をモデルに書いたと言われているが、一層ロマンティックで、メロディは甘く歌いまくる。しかし、こちらも単なる甘口で美しいばかりではない。冒頭の唯一のソロ、低域から最高音へと昇るフレーズでのみごとな表情付け。一気に聴き手の心を掴んで、ぐいぐいと曲に引きずり込んで行く。ヤンソンスのベルリン・フィルも、かつてのような肉厚な響きを引き出していて、五嶋の繊細だが強靭な音との間に緊張感を作り出していて、一層聴き応えのある演奏となった。 (田中明) --- 2003年07月号