デトレフ・ジールクの本名で監督したドイツ映画「南の誘惑」と、渡米後黄金期を迎える前の全3編が収められたBOX。
「南の誘惑」・1937年ドイツ(ウーファ)作品。
結婚を控えていたヒロインは叔母とともに訪れたプエルトリコの小島で、その島の統治者である元闘牛士に強く惹かれ衝動的に結婚してしまう。
しかし結婚生活はやがて事実上破たん、彼女の心の支えは長男の成長だけだった。そんな中で巡ってきた熱病風の季節、その年は大流行の兆しを見せ始める。
流行実態の調査と治療法を研究するため島にやってきた2人の医師、その一人は何と彼女の元婚約者だった。
島に拡がる伝染病、流行の事実をひた隠す保守的な島の人々、その意に沿わぬ医師たちの行動、夫と元婚約者を巡る確執と愛憎、のどかな南の島に緊張が高まる。
当時のドイツ期待の女優、ツァラ・レアンダーをヒロインに配した映画だ。
1933年のフリッツ・ラングの亡命、第二次世界大戦前夜、演劇界に続いて映画界もナチスに蹂躙されていく。妻がユダヤ人であったサークはついにこの年ドイツと訣別する。この作品でヒロインの思いに彼が託したものは何だったのだろうか。
「わたしの願い」
家族を捨てて出奔したヒロインが娘からの手紙に懐かしさのあまり帰郷、家族や周囲の人々との軋轢の中で紆余曲折を経て夫との絆を取り戻すまでを描く。
母に対し三人三様の思いを抱く子供たち、妻との再会に揺れる夫、教師の夫を慕う同僚の女教師、出奔のきっかけとなった元恋人も絡み、あちらを立てればこちらが立たないドロドロしたストーリーだが、サーク監督はヒロインの心の揺れをじっくりと描きつつ、ドラマティックに二転三転するストーリーも手際良くさばいていく。
ヒロインを演じたバーバラ・スタンウィックの凛然とした渋い二重演技には、心ならずも舞台から映画に転向した彼の舞台劇への郷愁めいたものも感じられる。
ベタなタイトルやサークらしくないハッピーエンドには意外な感じを受けるが、封入解説によるとこれは彼が考えていた別のエンディングが制作者側の意図に沿わなかったためとのこと、一時ドイツに帰国し再渡米した彼はこれからの自身の作品スタイルを明確にイメージしていたようである。
また、希望していたカラー撮影も製作者の意図で断念せざるを得なかったようで、後の作品のカラーの美しさを考えると残念なところだ。
束の間の滞在を終え、夫と女教師の新たな幸せを祈りつつ全てを背負って去り行くヒロイン、そんなストーリーをカラーで撮りたかったサーク、、、この結末では女教師がかわいそうだ。
「ぼくの彼女はどこ?」
ほんの味付け程度のミュージカル色、渡米後のユニバーサルでまずは小手調べ、といった感じの軽いコメディータッチだ。
取り立ててコメントするレベルの作品ではなく、大富豪の遺産を巡るお話はオードリー・ヘップバーンの初期出演作品「素晴らしき遺産」に似たストーリーで、制作年からするとこの作品が参考にされた可能性もある。
初々しいロック・ハドソン、当時のハリウッドスター然としたハイパー・ローリー、加えてジェームズ・ディーンが端役で登場するお宝映像。
音楽担当にヘンリー・マンシーニがクレジットされている。
価格的には「ダグラス・サーク・コレクション1」「・・コレクション2」よりもずっとリーズナブル、キャリアピーク前のサーク作品を回顧できる反面、1930年代の「南の誘惑」はさすがに時代を感じさせ、また映像や音が劣化した部分もある。
まあこれは止むを得ないところだろか。
他作品についても「コレクション 1・2」に収められた作品と比較すると作品レベルはやや低いが、これはサークのせいではない。
また、「ぼくの彼女はどこ?」 については「コレクション1」に収められており、すでにお持ちの方もいらっしゃると思う。できれば別の作品にしてほしかった。
特典映像はないが各作品の解説書が封入されており、コンパクトだが記載内容はなかなか興味深い。
(単品発売分の封入物等については不明)