中西保志を昔から評価していますし、カヴァー・アルバムにおいてもその伸びやかな高音の魅力と丁寧な歌唱は彼の良さとして感じ取っています。このアルバムでも誰もが知っている名曲をオリジナルとは違う雰囲気で自分の歌にしていました。
1970年代から80年代にかけて、メロディが美しく、歌詞にストーリーがあった頃の名曲ばかり選んでいますので、心地よく癒されました。
「女うた」がいいですね。どちらかと言えばオリジナルよりは湿っぽくなく、サラっと歌っています。情念が勝つよりは知性が歌詞の世界を表現している感じがしています。透明で少し切ない声質がよく似合います。
「かもめはかもめ」でも感じたのですが、歌詞に込められた中島みゆきの辛く悲しい思いが、彼にかかるとそれを昇華して受け止めたような感覚が伝わってきます。男性が女性の歌を歌うことの良さは、そのように少し客観的に歌の世界を表現できることでしょうか。
一方、男性の曲はオリジナルの歌唱が個性的でしたから、それに埋没したように受けました。「乾杯」「いとしのエリー」もそうですが、オリジナルの歌唱は個性が強く、歌い回しも崩していますから、それらが耳に残っていますので、それを取り上げるリスクの方が勝ったようです。
若い世代の方は別として、中西保志を含め、この時代の歌を聴いてきた者は同じ曲を繰り返し聴く習慣で育っています。当然、オリジナル曲の伴奏から息遣いまで記憶にあるものですから、カヴァーだと分かっていても、違う所があると違和感を覚えます。カヴァー全盛ですが、選曲を間違うと歌い歌手のカラオケを聴かされているように思ってしまいますので。