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さて、内容について言うと、アメリカ社会の過剰な競争心に対して「おれは負け犬だ。なんでおれを殺さないんだ」と無気力な曲調に乗って反抗するトラック1「ルーザー」がやはりすばらしいです。「ルーザー」は90年代以降を生きる者すべてにとって必聴と言えるでしょう。このオープニング・チューンにリスナーが共感できさえすれば、そのいきおいのままに、『メロウ』全体の無気力なスタイルにも共感し、『メロウ』を最後まで聴き通すことができるでしょう。『メロウ』は、ベックが全身全霊を力いっぱい虚脱させたままいろんな音楽ジャンルを放浪して作った雑多な無力作にして力作なのです。
さらに、ぼくの感覚で各トラックに踏み込むと、2は、トラッド・フォーク調。3は、ヒップホップ/ブレイク・ビーツ+フォーク。4は、ヒップホップを差し挟んだカントリーで倦怠感に満ちたナンバー。5は、ノイズ+ヒップホップ。6は、日常のトラブルを記録した音から始まって、歪んだ声で歌うフォーク。7は、これまた、歪んだ声で叫ぶ、効果音と欲求不満感とに満ちたヒップホップ。8は、ファンキーなヒップホップ。9は、オリエンタルで陰鬱なR&B。最後のガラクタ演奏が聴きどころ。10は、少し元気のいいフォーク・ロック。11は、いきなりノイジーに始まるパンク。ラスト12は、オリエンタルな感じのフォーク。アルバムの締め括りにふさわしく、これまで以上にだらりと流れるギターとヴァイオリンによって、これまでの倦怠感を多少なりとも和らげようとする心地よい虚脱感が漂ってきます。これで終わったかと思うと、不気味に乱れたノイズが発生し、タイトルの「ブラックホール」へと吸い込まれるかのように、このアルバムは終わります。
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