以前も
真夜中に降る光 (幻冬舎ルチル文庫)が意外なスピンオフで驚いたのですが、
今回も
センチメンタル・セクスアリス (幻冬舎ルチル文庫)からの予想外のキャラのスピンオフです。
といっても、前作の主人公春巳はほんのちょっとの登場なので、
本作だけでも十分楽しめます。
亡兄由多夏の恋人、売れっ子写真家の日和佐明へ、
10年以上も密かに一途に片想いしている大学生の千夏史。
男も女もとっかえひっかえで体にだらしのない日和佐に「子供は嫌いだ」と
全く相手にしてもらえない千夏史は、
意地っ張りで生意気な態度をとりつつも「好き」という気持ちをひた隠し、
ハウスキーパーとして日和佐の部屋に上がりこむけれど・・・
小道具を一つでもバラしてしまうと即ネタバレになってしまいそうなほど、
細やかな展開。
数年前に亡くなった兄、由多夏と日和佐の高校生時代と、
全く望みのなさそうな千夏史の今とが交互に綴られ、
日和佐と兄の由多夏は本当はどんな関係だったのか?、
日和佐は千夏史をどう想っているのか?、が
なかなかはっきりと明かされないため、
日和佐の言動に何度も傷付いてばかりの千夏史の切なさ、
由多夏の謎めいた態度に惑わされる日和佐のもやもやした感情に
寄り添いながら、2つの恋をじんわり切なく味わえます。
兄が亡くなっていることで、どうしてもトーンは物悲しいし、
日和佐の横暴ぶりにも好き嫌いが分かれそうですが、
最後にはそれらが1つにつながり、やさしい結末が待っています。
あとがきの後に後日談の甘々短編付きなのは、
かなりうれしいおまけでした。