1stアルバム『エテパルマ 〜夏の印象〜』(06) でその音楽を知り、2nd『パッサカイユ』(07)の2枚のソロ・アルバム、音楽を担当した映画《人間失格》のサウンドトラックと、常にその動向を追いかけ、遂には数多くの大物アーティストに提供してきた楽曲/アレンジワークス(菊地成孔、ゴンチチ、高木正勝、畠山美由紀、沖仁など)も掘り下げる程、大ファンになってしまった作編曲家/ピアニスト、中島ノブユキの約3年振りとなる待望の3rdアルバム。この新作も本当に素晴らしい作品なんです。
パリ/東京で作曲法/管弦楽法を学び、現在はアーティスト活動とともに日本大学芸術学部音楽学科で教鞭を執るという中島ノブユキ。クラシックの作曲法と和声への深い造詣に根ざしたエレガントでしなやか、且つ、印象的な"響き"をまとった彼の作品は、いずれも私の目の前に新たな音楽の世界を照らし出してくれます。
今作『メランコリア』では、多岐にわたる音楽的要素を孕んだオリジナル曲と共に、ボサノヴァ、クラシックといった彼の作品ではお馴染みのスタイルの楽曲から、映画《人間失格》のサウンドトラックでも展開していたオールド・スタイルなジャズ、そしてアイリッシュ・トラッドまでをも取り上げ、よりその音楽性の幅広さと、アレンジ面での懐の深さが開示された印象を受けます。
クラシカルな落ち着き払った雰囲気と優美な旋律、バンドネオンのノスタルジックな音色、巧みに濃淡を描き出す"響き"の繊細なタッチ、まるでヨーロッパの壮麗な教会で録音されたかのようなサウンドの奥行き、広がり・・・。CDの帯に記された"音楽〜時間〜世界への旅の道標"という言葉の通り、あるときは過去へと、あるときは未来へ、様々な時空間に導かれる、そんなイメージさえ喚起されるスケールが大きく、情緒に溢れる作品だと思います。
個人的なお勧め曲は2曲目の"忘れかけた面影"と、6曲目の"バンドネオン組曲 I トッカータ"。アルバム全体の流れ、ストーリー性も申し分無く、全体を通して深くその作品世界に身を委ねる事が出来るのも特筆すべき所。美麗なパッケージも秀逸です。