ページを繰るたびに広がるのは、まるでアルバムをひも解いたときのような懐かしい情景の数々だ。初めての眠れない夜に、不安げに窓辺にたたずむ男の子(「眠れない夜」)。プールサイドで恥ずかしげにこちらを見ている女の子(「少女時代」)。恋人と一緒のバスの中で、幸せそうにうたた寝をする女性(「時よ止まれ」)。本書に登場するのは、遠い過去の中の読み手自身の姿でもある。子どものころの大切な思い出や、ちょっと寂しかったあのころの記憶が、色鮮やかによみがえってくるのだ。
もちろん、著者がスポットを当てるのは、美しい思い出ばかりとは限らない。「写真を撮る前後の面白さを捉えようとした」と語っているだけに、どこかこっけいで、ユーモラスなものも多い。また、大人になることへの不安を表現した「孤独」、恋人との別れを描いた「ジ・エンド」など、シニカルで悲哀を感じさせるものもある。しかし、著者のまなざしがすべての人々の人生に祝福を送っているのは間違いない。それは、「幸せ」と題されたイラストが最後を飾っている点にも象徴されている。(中島正敏)
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