まず、この映画の素性をご存じの諸賢は、基本的になんだかんだ言いつつも興味津々で手に入れるので、置いておきます。
古い、ロボットがでてくるSF映画だ。スター・ウォーズのC3POのお姉さん分にあたる、キレイなロボットの出るドイツ映画だ。舞台は未来の大都会だ、位の前知識で興味を持ったあなたのために、私は一筆認めましょう。
映画としては中のやや下です。お話は陰鬱でドロンとした印象があります。監督の奥さんが脚本書いたのですが、イマイチです。その奥さんの書いたノベライズ
新訳メトロポリス (中公文庫)は、正直面白くありません(解説に価値がある本です)。戦前に平凡社の円本になっていて(世界大衆文学全集15巻)、はるか昔に現物をみたのですが、買わなくて正解でした。口絵は科学者と実験室そしてロボットのスチールに着色し、明らかに赤だけ浮いてしまって異様に唇が目立っているという。
当時これ買った人は売ったとおもいます。
演技は昔の映画なのでワザとらしく、大げさで、みな騒々しく、「ボケ」がいません。
前述した監督女房の脚本は、そう「ねらっていたが滑った」感じアリアリ。なので、事情を知らないでみてしまうとあなたがラストで猛烈にツッコむ羽目になります。
本当です。
これでおしまいかいっ! こんな終わり方かあっ! と。でも、責任者は出てきませんよ、お客さん。
白黒サイレントとありますが音楽は入っています。
これはなかなかステキです。映画音楽なんてかかわるつもりなどなかった音楽家人生設計していた人が、映像みながら必死になってスコアを書いている様子がうかがえる、結果ちょっと大げさですがオーケストラ映えする、すてきなBGMになっています。
なので、見る前にフロクの冊子を読んでください。この映画がたどった数奇な運命が、丁寧に書いてあります。監督がどういう人かも、時代背景も。
そのあと、ディスク2をみましょう。
この偉大なSF映画がなぜ21世紀の今日においてもなお人を魅了して、そして皆が完全版復活のために、それこそ何十年がかりで奔走してきたかが語られた、すばらしいドキュメンタリーが収録されています。
そして、おなじく収録されているポスターやスチールをみて、昔の人もSFに情熱かたむけたんだな、と思ってください。
そうしたら、あなたの前には90年前の人が100年後を想像して描いた、すばらしい映像と音楽が織りなす偉大なSF映画が待っています。本当です。
ラストはツッコんでもいいと、まだちょっとおもいますけどね。でも、それは許容範囲、想定「内」と笑いましょう。
本作は、予備知識を仕入れてからみた方がいい映画の代表みたいなものです。
でも、仕入れる価値はあると思う★×5のすばらしい映像作品です。おすすめです。
数百円の安い
メトロポリス 特別編 新訳版 [DVD]はこのDVDの代わりにはなりません。それこそ本当の「安物買いの銭失い」です。しかし、はまった人には「改悪バージョン」を見るという、貴重な体験をさせてくれます。
なので、「はまった」人には安い方もネタとしておもしろいのでおすすめです。
ちがいのわかる人になれます。
この映画に惚れてロックしてしまったジョルジオ・モルダー版も、良心的な編集なので、これをみたあとみると、それはそれでおもしろいと思います。
オマケ
佐藤春夫は1929年に「のんしゃらん記録」というSFを書いています。この映画の日本公開がその年の春ですが、この映画を見てこの作品(図書館で全集を読むのがいいです。短編です)を読むと、
1
偉大な作品は偉大な人をも動かす。
2
小説と脚本・ノベライズ作品という違いはあるけれど、「才能」の差って残酷なほどハッキリあるんだな、と実感できる。
3
佐藤春夫も同じ映画みたと思うと、ちょっと楽しいです(公開当時佐藤春夫は東京小石川区に住んでいました。みていなくても、まちがいなく情報には接しているはずです)。