メディアと伝達技術の発展を横軸に、その時代における権力が、いかにメディアを操ってきたのか、いかに世論を操作しようとしてきたのかがわかる労作である。日本は政府と軍部が徹底的にメディアを規制、弾圧したのに対して、欧米はメディアが作り出す世論を操作しようとしてきた様子がわかる。特に米国は、合衆国憲法修正第1条の「表現の自由」を守りながらも、徹底的にメディアコントロールを行って、戦争や政局を有利な方向に持って行こうとしてきた歴史がわかる。
日本は戦前は、メディア自体を軽視して、小村寿太郎がマスコミ対応を誤って、米国世論がロシア側についてしまった経緯なども記されていて興味深い。
ただ、2点ほど不満がある。それは、現代においては、新聞は冷静なメディアで、テレビは煽られやすいメディアであるとする視点。メディアの特性から、そうであることは否めないが、新聞が煽って来た時代があること、テレビ局スタッフは新聞を参考にしていることも忘れてはならない。
さらに2次資料、3次資料のレビューの解釈がほとんどで、歴史学的な新しい発見がないこと。どちらかというと、文献的な概観である。
だからと言って否定するものではない。メディア史、ジャーナリズム史、メディアリテラシーを学ぶものにとっては、良書であることは間違いない。