この選手名鑑の売りはなにより選手の情報の豊富さにあったと思うのですが、
近年はネタが無くなっているのかどうでもいいことをだらだらと書いていたり、あるいは情報の間違いが目立ちます。
間違いの例
・フィルダーの欄では「ダイエットのため2008年から菜食主義者になった」と書かれていますが、
フィルダーが菜食主義者になったのは肉食は残酷だという妻の思想に感化されたからで、ダイエットのためではありません。
しかも今ではとっくに菜食主義はやめています。
・マウアーの欄でサンタナ放出に付いて触れられており、理由を「07年2月に結んだ総額1億3750万ドルの契約が負担になった」
からだとしていますが、実際にはサンタナがこの契約を結んだのは08年2月、つまりメッツに移籍した後のことです。
・また、マウアーが「ツインズと長期契約するなんて、僕はどうかしていた。ヤンキースにトレードしてほしい」と言ったとありますが、
そんなニュースは見たことがありません。もしこんなことを言ったらミネソタでは大問題でしょう。
向こうのインタビューで「ヤンキースならもっと多額のオファーをしたのに」と聞かれ、
冗談めかして答えたことはありますが、まさかそれをまともに受け止めているのでしょうか。
おそらく探せばもっと間違いはあるでしょう。ほとんどその辺の写真週刊誌と変わらない情報精度だと思います。
また選手の能力評価についても、近年MLBの必須知識となりつつあるセイバーメトリクスをほとんど無視している点が気にかかります。
・本書では前書きで捕手のリード能力を図る指標としてCERA(捕手防御率)を挙げています。
しかしCERA自体はかなり前からある概念で、同一チーム内でならともかくチームが異なれば単純に比較はできず、一概にリードの良し悪しを図ることは出来ません。
しかし本書ではこれをさも万能の指標のように扱っており、個別の選手紹介でもやたらと引き合いに出されます。
・守備指標に関しては、DRS、UZRがいずれも3年連続で平均を大きく割っているバーノン・ウェルズを「平均レベルに回復している」、
外野転向3年間でDRSが並、UZRは平均以下のライアン・ブラウンについても、もはや誰も参考にしていないようなレンジファクターを引き合いに出して
守備範囲はトップクラスと断定しており、基本的にセイバーメトリクスについて無知であることが伺えます。
・日本人の過大評価も当然ながら顕著であり、「福留の守備はMLBのライトでもトップクラス」というくだりについては失笑ものでした。
イチロー、ペンス、ブルース、ヘイワード、ワースなどがひしめく中で福留がトップだと本気で思っておられるのでしょうか?
このようなものであり、5段階能力評価についてはほとんど当てにならないと思ったほうが良いでしょう。
紹介している成績項目や内容が昔と比べ落ちているというわけではないのですが、近年のMLBのスタッツ解析、新指標が急速に進歩しているため、
結果的に能力査定の基準が時代遅れでかなりピントのずれたものになっています(MLB公式や、ESPNのようなニュースサイトの記事と比べてみると分かりやすいです)。
また選手によって紹介スペースが違うので、中には成績欄や紹介文が気の毒なぐらい小さかったりします(おそらく日本のウィキペディアのほうが詳しい)。
ならばいっそ選手の小ネタ収集用に…と割りきるにしても、前述のようにいい加減な記述が散見されるため、それも難しい状態です。
おおむね以上のような内容であり、1700円の価値があるか?と聞かれるとかなり疑問です。個人的にはあまりおすすめできません。