原著に出会い、訳した者として、本書をご紹介します。
著者は独デュッセルドルフのオルガニスト。戦後間もない頃留学先でメシアンに出会い、彼の初期のオルガン作品を演奏していく内に信頼を得、大曲《聖三位一体の神秘への瞑想》の欧州初演を任され、1970-80年代の「メシアン・スペシャリスト」となります。
その間、著者はメシアンと長時間にわたる対談を2回持ちます。テーマは彼の作品で用いられている技法や当時の音楽的な潮流も含まれますが、何よりも彼が自作を通して伝えたかったこと、すなわち彼の神学が中心となります。
さらに最後の章では、著者の演奏家としての具体的な体験に基づき、彼の時の哲学やリズムの自由度について詳細な実例が展開されます。演奏家ではなくても音楽を知る方なら、著者が伝えようとする内容の奥の深さに思わず息を呑むことでしょう。この箇所は一見オルガニスト、あるいはオルガン関係者や現代音楽の専門家向けの記述に思われるかもしれませんが、実は、彼の神学を現実に「音」にするに当たっての例証となっているのです。
他にも、デュッセルドルフで行われた2回の「メシアン・フェスティバル」でのパネルディスカッション、アムステルダムなど2カ所で行われたメシアンの講演録、オルガニストにとって特に価値があると思われる、オルガン作品のレジストレーションを含めた演奏上の具体的な所見、そして著者がメシアンとの多年にわたる関わりを回想した魅力的な第1章――生誕百年記念のこの機会にメシアンに触れてみたい方、その作品をある程度聞いてはいるもののより深く理解したいと願う方に心からお勧めできる1冊と申せましょう。