ムーミンにはコミックス版もあるようで、本書はそのなかからあるひとコマを切りとって、それぞれに著者冨原氏の味わい深い注釈がついたもの。さりげない言葉、ふと、聞き流してしまいそうな素朴な言葉の奥には、じつは物事への意外な見方や考え方がこめられていて、それが各キャラクターならではの個性的なふるまいと表情で述べられる。はじめてみかける顔ぶれもちらほら。場面は一触即発、さまざまなかけひきのまさに山場、というものもあれば、すべてはあとの祭り、残るは後悔ばかりなり、というシーンなどなど、のっぴきならない人生の晴れ舞台。しかし、全体に、しみじみほのぼの、まったりと癒し系のものが多い。
それでも、共通していえるのは、身近でシンプルないいまわしのなかにも叡智が宿っていて、そこには人間(動物)への深い洞察と愛情がこめられており、人生の途上で困難に遭遇したとき、どうしてよいかわからないとき、悩みつつ深く自己をみつめなおさなければならないとき、ここにある言葉たちは、きっとなにかに気づかせてくれる。ムーミン谷のひみつの言葉、それは受けとる人ごとに意味の異なるひみつとなる言葉で、私たちそれぞれのゆくべき、坂道、砂利道、茨の道を、ほのかにその人色に照らしつつ、そっと背中を押してくれるような、…それでもがんばらなくていい、各人は各人であればそれでいい…とそんなふうにやんわりと力をくれる、やさしく粋な言葉たちのデザート。