日本では、読み物やアニメから、『ムーミン』を知った人が大半だと思いますが、欧米、特にイギリスでは、日本の事情とは異なり、新聞に連載された漫画から『ムーミン』の人気が広まったそうです。本書は、こうした経緯を、作者トーべ・ヤンソンの生涯、家族、世界観と共に、コミック版と児童文学との相違比較を通じて解説した内容になっています。当時、『ムーミン』の認知度が、作者の母国フィンランドでは、それほど高いものでなく、フィンランド語で刊行される前に、英国でコミックの連載が開始された事実は、ちょっと意外に思いました。コミック版では、高級リゾート地で浮かれるどこかスノッブなムーミン・パパ、家出した両親に悩むムーミントロール、ビキニ姿のスノークのお嬢さんが登場するなど、今まで抱いてきたイメージを裏切るようで、最初は違和感を覚えました。しかし、ドタバタ、ギャグ、世相の風刺をテーマにしたコミック版の特徴は、児童文学の『ムーミン』の世界観を守りながら、英国人のユーモア気質に合わせた作者の創作(換骨奪胎)の苦労がうかがい知れ、興味深いものがありました。作者自身が手がけた『ムーミン』の挿絵や、コミックからの抜粋もあるので読みやすく、実際に、ムーミンコミックを読んで見たくなりました。