かつてLONDONレーベルから出ていたアルバムに、さらにいくつか小品を追加した再編集盤だ。タネーエフの「前奏曲とフーガ」とチャイコフスキーの「ドゥムカ」は“Steinway Legends”と題された別の企画モノに収録されていたが、リャードフ「音楽の玉手箱」、ボロディン「スケルツォ」についてはしばらく入手できるものがなかったので、待望の再リリースであり、アルバムとしての魅力を一層増したといえる。
ムソルグスキーの「展覧会の絵」をアシュケナージは2度録音しているが、こちらは82年録音の新しいもの。私はこの楽曲が大好きで、多くの録音を所有しているが、このアシュケナージ盤とホロヴィッツ盤が双璧と思う。ホロヴィッツが情感をありのままに発散した演奏なのに対して、アシュケナージはあくまで近代的なピアノ演奏に関する完璧な教養をバックグラウンドにしたウェルバランスな名演だ。まじめな演奏であるが、詩情を湛えたピアニズムと技巧の限りを尽くしたパッションの放出があり、あらゆる面で聴き手に不満を抱かせない。就中「ブイドロ」と「バーバ・ヤーガの小屋」の迫力は比類ない。
ラフマニノフの「音の絵」は2集あるが、こちらは第1集といえる作品33。第6曲の土俗感、第7曲の憂い、第8曲の壮麗な音響が見事。
リャードフの「音楽の玉手箱」~この愛すべき2分ちょっとの小品をアシュケナージのピアノで聴けるのが嬉しい(有森博もよいが)。洒脱な味わいに満ちている。チャイコフスキーのほの暗い演出も美しい。6人の作曲家によるロシアの魅力あふれる名品・逸品を一遍に楽しめる良いアルバムとなった。なお録音年代は1977-83年。デッカらしい高いクオリティはいつも同様。