このせりふは、主人公の朋子がいつもはこころがそれぞれのところへいってしまっている親友ミーナの家族が揃って海水浴へいった貴重な幸福すぎたある夏の日の写真をみてつぶやく言葉です。
小川洋子さん独特の世界が静かに柔らかに展開されるなかで、この言葉でもう切なくてたまらなくなってしまいました。私の年代(40歳です)になると、祖父が逝き、祖母が逝き、子供が親離れをしていき、兄弟が不通になっていきます。その代わりに、得るものも確かに多いのですが、子供の頃に大切だったものとは明らかに違います。
その愛おしさを思うと、この朋子の大丈夫、と言った言葉が本当に自分の胸に本当に響くのです。
子供の頃に、いろいろへんてこだったことが実は当たり前のことだったり、普通だったことがとても贅沢なことだったりしたことに思いが巡る、これまでに最も心に静かにそっと深く深く響いた作品の一つです。