内容紹介
本書では,私たちの脳がいかに学び,いかに考え,そしていかにして,私たちはそういったことのできるマシンを作れるのか,という問いに対して,「知の探検」を試みています。
今日まで,専門的で難しい問題の解決を手助けするプログラムが組み込まれたコンピュータは多数開発されてきました。ところが,私たちの日常生活を助けてくれるような,「常識的な思考」ができるマシンはいまだに存在しません。なぜ,そのようなマシンの実現が難しいのでしょうか? 普通の人々が持っている常識を持ち,臨機応変なことのできるマシンを,なぜ実現できないのでしょうか?
1950年代に,“人工知能”と呼ばれる研究分野は,いくつかの困難な技術的問題を解決するコンピュータ・プログラムを開発し,成功裡にスタートしました。もしマシンがいくつかの難しい問題を解決することができれば,それよりやさしい多くの問題も解決できると誰もが信じました。しかしながら,これは間違いに終わりました。
これまで人間の常識的な思考についての研究は盛んではありませんでした。なぜならば,大部分の研究者は物理学者のまねをしようとしたからです。つまり,考えることのできるマシンの実現に向けて,ある一つの“統一理論”を作ろうとしてきたからです。
これに対して本書では,これまでとは違うアプローチを提案しています。従来のどの理論が‘正しい’かを見つけようとするのではなく,もっと大きな構造にそれらを組み込むことによって,すべての理論の長所を結びつけようとしています。本書のどの章も,思考システムが行き詰まるのを防ぐために数種類の方法を示し,さまざまな状況に応じて,多くの“思考路”の中のいずれかにスイッチを切り替え対処できるように構成しました。
本書を長時間「探検」することによって,読者に多くの役に立つ新しい“思考路”を提供しています。
著者について
Marvin Minsky:
マーヴィン・ミンスキーはマサチューセッツ工科大学(MIT)メディア・アート&サイエンスの東芝プロフェッサーであり,電子工学およびコンピュータ科学の教授である。人工知能,心理学,光学,数学,および計算理論の先駆的研究を進めてきた。コンピュータ・グラフィックス,知識と意味論,マシン・ビジョン,およびマシン・ラーニングの分野に多大な貢献をし,宇宙探索に関する技術にも情熱を注いだ。1990年には日本国際賞を受賞している。
ミンスキー教授は,インテリジェント・ロボット研究の先駆者の一人であり,触覚センサー,視覚スキャナーと,ソフトウェアおよびインタフェースを用いてロボットハンドを開発し,1951年には世界初のニューラル・ネットワーク学習マシンを開発した。1959年,ジョン・マッカーシーとともに,MIT人工知能研究所を創設。人工知能,知覚,言語の研究分野でインパクトの大きい論文を発表。The Society of Mind( 邦題『心の社会』)は,心についての何百ものアイデアを提供しており,それらのアイデアは本書の内容へと発展している。