主演女優のスー・チーは、この作品がカンヌ映画祭で上映されたとき、自分の演技のふがいなさを見てショックを受けたそうだ。でもこの映画のスー・チーは、演技云々より、自分をコントロールしきれない女が持つ魅力を表現してるところがすごくいいんだけど。そんな彼女の回想形式のナレーションがよくて、中国語がわからないことが悔やまれる一方、わからないなりに魅力があって聞き入ってしまった。それと音楽とリー・ピンビンによる映像美。これら3つが作り出す映画の流れの素晴らしさを再確認したくて、たびたび見返したくなる映画です。
ホウ・シャオシェンは『憂鬱な楽園』、『フラワーズ・オブ・シャンハイ』を撮り、この作品で一気に若者の世界へとシフトしたようだけど、この映画は、その意気込みがかもし出しているのかもしれないあやうさと、大作家としてのゆるぎない確信が見事に同居する世紀の傑作です。この映画の魅力の根源は、スー・チーとガオ・ジェのキャラクターと、その関係を描いたこと。ガオ・ジェが住むマンションにスー・チーが泊まり、ガオ・ジェが朝ごはんをつくってくれるシーンは、本当に最高。あのマンションは、実際にガオ・ジェが自宅として住んでいたんじゃないか?と思ってしまう。