叙情的なメロディーとオルタナティブなサウンドが程よく混在する代表作の一つ。
個人的に特筆すべきは音響的な美しさ。
知人の納屋で録音したという一枚で、鶏の鳴き声まで楽器と化している。
インタビューによればトム自身、外部の音を遮断する近年のスタジオの傾向に不満だったそうだ。
この目論見は見事に成功し、特に3曲目冒頭での音の広がりなどは楽曲自体の美しさと相まって、何度聴いても鳥肌が立つ。
床の軋む音、距離を置いたマイクで録ったのか枯れたピアノの音、
エレクトロやヒップホップのようにシンプルなリズムを全力で叩く生ドラムなど
このアルバムでしか聴けない魅力的な音がつまっている。
(中にはスクラッチを取り入れた曲まである…)
トム・ウェイツという人は、我が道を行く独特の才能という面もあるだろうが
おそらく新しい時代の状況も良く見えていて
その上で自分の出来る最も効果的な表現を選択できる人間なのだと思う。
それが感覚的な物なのか計算によるものなのか、
飄々とした人物像からはとても判らないが、いずれにせよ傑出した才能の一人には違いない。
入門にも適した聴きやすいアルバム。
歌詞も素晴らしいので是非日本盤で。