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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
至極まっとうにかけがえのない日々,
By mk-my (東京都世田谷区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: ミュージック・ブレス・ユー!! (単行本)
本当にそんな感じでした。文章も、物語も、普通であることが輝きを放っています。 メール送信のくだりとか大好きです。
14 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「ほんなら、またね」,
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レビュー対象商品: ミュージック・ブレス・ユー!! (単行本)
アザミ。高校3年生。「音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事」な日々を送っている。 髪は赤。メガネ。歯にはカラフルなゴムをはめた矯正器(もっともこれは、歯科医の強烈な 色彩のセンスといおうか。こんな歯科医がいたら楽しい!)。 背は高く、いつでもイヤホンを耳に突っこんでパンクロック三昧の女の子だ。 そんなアザミのおよそ半年ほどの軌跡。 どこへも踏み出せないまま、音楽に浸り、焦燥感もちらつかせながら 学校とバイトに紛れてゆくぐだぐだした日常。 大阪弁がリアルで、何気ない会話が活きている。 全部、日常のこまごました事象であり、心の動きであるのに ああ、どうしてこうも胸に突きささるのか。忘れ去られてしまう、一瞬の出来事と それに付随する思いを、こんなにも丁寧にそしてリアルになぞって、それが 読み手のなかに陰翳に富んだ軌跡を遺すのだ。 自分と他の友人との違いをアザミはゆっくり見つめる。 親友チユキの恋の行方、同級生のナツメさんやトノムラとの関わり、時々メールをやりとりするイギリスの女の子アニーなど、それぞれのエピソードがアザミ自身を 逆照射するものになり得ていて、読み飽きない。 チユキという子の知的なくせに、妙に熱い血を滾らせた小気味よい正義感は 忘れがたい。 もうひとつ、一見放任のようにみえる両親とアザミとの関わり方が印象的。 明らかにされてはいないが、どうやら学習障害と診断されるような行動癖があったことが ちらりと出てくるのだが、両親の、アザミが元気で今在るだけで充分良し、とする スタンスがいい。 そのただ中にあるときには決して見えない輝きを掬いとって、青春という 時間の無二の姿が、今の私には尊くさえ思えた。
5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
独特の空気を通じて共鳴する青春小説,
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レビュー対象商品: ミュージック・ブレス・ユー!! (単行本)
08年刊行。デビュー作"君は永遠にそいつらより若い"ではその胸をえぐる変化球に驚いたが、本作でもまた、このタイトル/装丁から想像される凡百の「青春小説」からは大きく逸れる軌跡に意表を突かれる。高校3年生、女子にしてはのっぽでメガネ、髪を赤く染め歯列矯正のブレースをしたアザミが、メンバー間の諍いからビンタを喰らい、ぼんやりとこのバンドも終わりかー、と思いを巡らせるところから物語は始まる。散乱したリュックの中身と同様に、アザミの一種混乱した思考に引き込まれるような感覚を覚えるが、この小説全体に滲む感覚もまた、ぐるぐると説明し難いエモーションの渦巻きだ。そもそもが人間のアタマん中、そうそうキレイに整理されとるわけでなし、この色んな感情の多重衝突状態こそがリアルなんだろう。だから、というわけはないが、この物語は、とあるバンドの奇跡のような青春の一コマを描き出さないし、箱庭のように美しいノスタルジック譚を創造することもない。あるのは、味気ないまでの現実だ。 と同時にそこには、電車の隣に座ったおよそ頭が良さそうには見えない女子高生が、広げた足の間に頭を挟み、何やらウーウーとうなり声を挙げておるその溺れるような葛藤や、他人に理解されないもどかしさ、あるいは理解できないことの悔しさみたいな感覚が、ちょっと並でない強さで溢れている。 つまるところ、美しくショートカットされることのないアザミの思考や行動は、傍目にもごちゃごちゃとしておよそスマートじゃあないが、それがゆえに切実で、大切な感情をいくつもいくつも浮かばせる。彼女は自分の限界に少なからず自覚的だし、出来ることがそう多くないことにも気づいている。とは言え「私は私だ」と達観できるはずはなく、泣きたくなるような苛立ちや、どうしようもない焦燥感こそが日常だ。アザミが唯一「他人と違って」いるところ、それが音楽(主にMxPxやSUM41といったアメリカのインディー・パンク)への依存度だろう。それにしたってアザミはそれが「人より優れている」なんて思ったことはなく、むしろ「恥ずかしい」と感じているようだ。自分と同じように音楽へ依存している同級生のトノムラに対する、こんな記述がある。 しかし、このトノムラという人間は自分より恥ずかしいかもしれない、とアザミは直感した。他者により多くの期待をして、自分より多く裏切られてきたかもしれない、と。 タイトルから漠然とイメージされる、音楽がもたらす奇跡のような福音、そんな「小説」めいた展開は用意されていない。が、十代というまだそう広くない世界だからこそ生まれうる、切実でかけがえのない感情が、音楽という"空気"を通してかつて自分の中にあった(かもしれない)感覚と共鳴する、そんな特異な青春小説。こんなの、なかなか書けんだろう。読後、内に残響する感覚がとても心地よく感じられた、他にあまり類を見ることのない良作。
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