現時点で結構多くのレビューが掲載されていて、その全て5つ星というのは大変なものだが、レビュアー達の評価に間違いはなく、素晴らしいの一語に尽きる内容である。ちなみに本書の原題は‘POWER,SEX,SUICIDE’であるが、真核生物におけるエネルギー創造、性別の誕生、そしてアポトーシス(自滅あるいは自殺)を表している。そのいずれにおいても、ミトコンドリアが関わっていたというのが、本書の主張である。
ミトコンドリアや葉緑体が細胞に寄生し(あるいは取り込まれて)、その後の地球生命に大変大きな影響を与えたという「生命共生説」はリン・マーギュリス以来ほぼ定説となっているが、本書はいかにしてミトコンドリアが細胞に取り込まれるに至ったかということから書き起こし(このあたりは仮説なのだが、それがまた素晴らしく納得できる内容にまとめられている)、その後の真核細胞の進化への影響を、さまざまな角度から検証していく。
ニック・レーンは、とがきで「内容はやや専門的な領域に踏み込んでいるので、難しい部分もある」と断っているのだが、翻訳が素晴らしいので、ポピュラーサイエンス・ファンにも読み進めることは困難ではないだろう。ちなみに、翻訳に当たったのはミチオ・カクの『パラレルワールド』やアンドレ・ノールの『生命・最初の30億年』を訳出した斉藤隆央氏である。さらにまた、的確に訳注を挿入する編集がにくい。まさに「かゆいところに手が届いている」のである。
巻末の解説は、本書にもその研究が紹介されている都老研の田中雅嗣氏が筆を執っていて、この内容がまた本書の内容を極めて的確に紹介している。この解説を最初に読むというのもいいかもしれない。