先ず、本ディスク特典内で何度も語られているトルコ国民の本作への強い不満は理解出来ます。
コメントに有る通り税関で官吏が発する言葉ですらトルコ語でないとすれば、『事実に基づいた話』として自国の刑務所を強く批判した映画が世界的に高評価を受ける事は我慢ならないでしょう。
後、麻薬に対して厳しい日本人としては、ハシシの密輸を軽微と見做し、量刑の重さに対する不満から拘留中の脱走やトルコ人の殺害(これは殺される側にも大いに問題が有ったので、100%反対では有りませんが)をも合理化してしまう描写も如何な物かと思いました。
以上の事を抜きにすれば、 役者陣の見事な演技が素晴らしく、描かれている監獄の様子も、どこと特定しない『酷い場所』としてならば舞台道具的に良く出来ています。
残念ながら夭折してしまったブラッド・デイヴィスの張りつめた演技以外でも被虐演技には抜群の冴えを見せるジョン・ハート(1984やエレファントマン)、私が観た映画では何時も殴られて血塗れになっているランディ・クエイド(ブレイクアウトとクワイヤーボーイズ)の外国囚人役者達が見事です。
トルコ人を演じる役者も特に所長役のポール・スミスは歴代映画でも屈指のサディスト振りで、本当に出て来るだけで怖いです。
囚人で有りながら外国籍囚人を喰い物にするパオロ・ボナッチェリ演じるリフキのイヤらしさも相当な物です。
時にはプラトニックを越えた囚人同志の愛情をサラリと描いたのはイギリス人スタッフの趣味でしょうか。
ジョルジョ・モルダーのアカデミー賞受賞スコアは、旋律は良いですが電子楽器の音が現在では少々古びて聴こえました。
個人的には異国で刑務所に入る様な真似がしたくなる点も含めて充分楽しめました。
欠点も有り、挑発的な作品ですが決して凡作では有りません。
特典は前記の監督によるオーディオ・コメンタリー以外にもプロデューサーや出演者のインタビューが掲載されて居ますが、特に原作者ビリー・ヘイズ自身が登場するドキュメンタリーが彼の若さも含めて興味深かったです。