この本の著者の一人、海戦の現場を経験した淵田美津雄氏が終戦まで生存できなかったら、そして共著者の奥宮正武氏と共にほとんど廃棄処分されてしまった資料を丹念に調べ上げてくれなかったら、これほどまでに貴重な戦記は残らなかった。
日本軍の暗号は解読され手の内は詳細まで筒抜け。『これほど大規模な作戦の詳細な情報がこうも簡単に手に入るものか。わざと偽情報を流しているのでは?』と疑った米海軍士官もいたほど。
ミッドウェー海戦に先立つこと2ヶ月前に珊瑚海海戦でも既に暗号は解読されていたため日本海軍機動部隊はタイミング良く米空母に発見され、ポートモレスビー攻略は延期。この時点で暗号が解読されていることを疑うべきだったが、連戦連勝でかかった『慢心病』は重過ぎた。
とは言え、仮に作戦が漏れていても先にアメリカ空母群を発見しさえしていれば勝敗の行方は分からなかった。しかしここで不運が日本海軍を襲う。アメリカ空母群上には厚い雲がたれこめて艦隊を覆い、その上を通過すべき索敵機の利根4号機はカタパルト故障で30分の遅延。
淵田氏は『黎明二段索敵にすべきだった』と悔しがる。また『伏線としてもともと索敵と情報収集を軽んずる日本海軍の弱点があった』とも氏は指摘する。しかし彼も言うように全ては後の祭り。ミッドウェー海戦は日本海軍が負けるべくして負けた。
この本は戦記物というジャンルを越えて多くの教訓を読者に与えてくれる素晴らしい書だ。何カ国語にも翻訳され、アメリカでは海軍学校の必読書になっているというのも十分に頷ける。全ての人に必読書として勧めたい。