日本軍の真珠湾奇襲以降、アメリカ国内では、反撃の姿勢を全く見せない米国
海軍に対する非難が高まっていた。実は、海軍は、南太平洋上の一隻の空母
をおとりに日本軍をおびき寄せ、米軍が集結している海域まで誘導し、ミッドウェ
イで一気に反撃に出るという秘密の作戦を決行しようとしていたのだ。しかし、
実際に任務に当たる空母の乗組員も雷撃飛行隊のパイロットも、任務の目的
を一切知らされず、上層部からの命令に従うのみの毎日に、次第に不満が募
って行く…。
太平洋戦争中に、実際に行われた(とクレジットでは説明されているが、フィ
クション的な部分も多いようだ)米海軍の作戦を基に描いた戦記ものの秀作。
ハサウェイ監督は、キャメラ・クルーと空母に乗って、実際の空母の様子を約
5万フィート分撮りためたとのことで、そのフッテージ(映像)が、本編に十分に
活用されて、セットやミニチュアでは決して表現しきれない本物の迫真性を添
えている。日本未公開作。
何より、この作品が素晴らしいのは、太平洋戦争最中の作品にもかかわらず、
時として、人種差別的であったり、ヒステリカルになりかねないプロパガンダ
臭がほとんどない点。ハサウェイ監督が本作で描くのは、任務を黙々と遂行す
る軍人たち(士官、下士官、兵問わず)の統率がとれた潔い姿である。そこには、
極限状態での、ある種の厳しい美が感じられる。ハサウェイ演出は、基本、ド
ラマチックな盛り上げを出来るだけ避け、あくまで戦争の日常を淡々と描いて
いくが、そこに迫力あるアクション・シーン(実際の空撮や空母のフッテージ)
も織り交ぜたりして、硬軟の使い分けは、さすがベテラン監督といった感じ。
太平洋戦争を描いた作品としては、ホークスの『
空軍 / エア・フォース 特別版 [DVD]』(43)
やフォードの『コレヒドール戦記』(45)などと並んで、もっと評価されるべき作品
だろう。
演技陣では、何と言っても、ドン・アメチーの士官が絶品だ。感情を表に出さな
い(部下の生存を確認して、最後に初めて笑顔を見せるのがいい)冷厳な人物
というのは、どちらかと言うと、二枚目のやさ男役が多かったアメチーにしては
珍しいが、シリアスな演技が実に素晴らしい。命令を下す男の自制心と孤独
が滲み出ている。
本DVDは、クラシック作品に力を入れている20世紀フォックスらしく、白黒諧調
が素晴らしい画質だ。若干、キズがある箇所や、コマ飛びがある箇所(ヘンリー
・モーガンが、ソファから立ち上がるショット)が散見されるが、全体としては気に
ならない程度。残念ながら、特典映像、予告編などの収録はなし。他社から、
パブリック・ドメイン盤も発売されているが、映画ファンであれば、こちらの正規
盤を買うべきだろう。