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肩のこらない入門書って、こういうのを言うんでしょうね。出版翻訳を志す上の心がまえから、具体的翻訳の技法、翻訳出版の舞台裏、ちょっと恥ずかしい個人的事情まで、軽い乗りで大サービスしてくれちゃってます。でも、この乗りに騙されないように。書いてることはかなりシビアですから。
文芸翻訳で最も大切なのは「好きに」訳すことだと言い切ってるのもすごい。
田口氏ぐらい実績のある翻訳家にこう言ってもらうと、翻訳家志望者も心強いんじゃないだろうか。もちろん、原作に対する敬意と、読者に対する誠意を前提として「好きに」やんなさい、と言ってるんだけど、ま、その辺りはご自分で読んでみてください。
もしあなたが翻訳家を志すなら、一読の価値はある。田口氏の方法論に納得できない人も当然いるでしょうが、そうでなければこの本はあなたのバイブルになるかも。
翻訳自体に興味はなくても、海外文学やミステリが好きな人にはお奨め。一応、入門書なので、具体的な翻訳技法に関する部分では、例題としてかなりの英文が出てきますが、英文を飛ばして解説だけ読んでも、充分面白いです。
翻訳作品を新しい目で読み解くためのヒントがいっぱい詰まってます。
読み終えて、近ごろ面白い本を読んだという印象をもった。正直に言うと、入門書としてはいささか歯ごたえがありすぎて、うまく消化できそうもないところもあったけれど、ミステリに限らず、多少とも翻訳に興味をもっている人間にとって、本書は必読の一書と言っても過言ではない。
構成にも工夫がこらされている。著者が最初に述べているアドヴァイスにしたがって、まがりなりにも試訳をしながら読みすすめ、その後のコメントを読むと、随所に目からウロコが落ちるような指摘がある。ふと気がつけば机のまわりはウロコだらけ---と言うのはちと大げさすぎるにしても。
それぞれの章の合間に配された「ほんやく万感」が、これまた読んで楽しい小エッセイになっていて、いろいろと参考にもなる。
ともあれ、当分の間は本書を座右に置き、参考書よろしく読み返しながら、勉強を続けたいと思った。
(翻訳歴二年 S・H)
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