1963年に、雑誌『宝石』に連載された記事などを再編集したものです。当時のミステリーによく登場したアイテムを百科全書風に並べ、解説コメントをつけています。
後半が妖怪学入門となっていることからわかるように、そのほとんどが、今のミステリーというジャンルとはかなりかけ離れています。もちろん京極や宮部のファンあたりならいいでしょうが。しかし、これは、著者のせいではなく、当時、ミステリーが、まだ本来の、猟奇色のある小説とされていたことによるものです。トリックネタとしては、怪奇オチや、病気オチ、乱歩以来の氷など、いまとなっては、高校生しか喜ばない程度のものです。
ゴシック的な古典ミステリーのレトロスペクティヴ(回顧)としては、一読の価値があります。名作とされるもののから、それほどでもないが有名になったものまで、60年代以前の主なミステリー作品が言及されています。さらには、森鴎外の『高瀬舟』の安楽死の描写まで引用されています。
これだけの話をネット検索もない時代に集めた努力には頭が下がります。しかし、基本的にフィクションの小説からの引用に依存しており、かなりの多くの項目で、医学的、薬学的、歴史的な事実誤認があります。自分がミステリーを書くネタに利用するのには危険です。